2011年度講義内容(シラバス) | office_hiroko

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 和光大学A棟816号室を根城にさまざまな活動を展開する山本ひろ子研究室。学内のはみ出し者、山伏、学外から勉強しにきた外人と様々な人種で構成され、いまや一種のアジール(聖域)と化している。毎週一回のゼミの後、夜会と称して山本先生を囲んだ懇談会を開催しており、そこに連れ込まれていつの間にか一員となった者も数多い。ゼミとは別に、有志による勉強会も随時開いている。また学外の学びの場である成城寺小屋講座にも主体的にゼミのメンバーは関わっている。長野県蓼科の山荘や、高知県物部町の「和光大学ものべ荘」、そして鶴川の「岡上ハウス」などの拠点を持ち、日々勉強に邁進する。本HPはそんな山本研の活動の一端を発信すべく2011年5月にリニューアルした。

2011年度講義内容(シラバス)

シラバス.jpg 山本ひろ子先生の和光大学における2011年度講義内容(シラバス)についてご案内致します。



近代日本の課題
前期、火曜 2時限
シラバス 中上.jpg [授業テーマ]
中上健次の物語世界をよみとく。 『岬』で戦後生まれ初めての芥川賞を受賞した中上健次は、紀州新宮の被差別部落出身の作家である。授業では、熊野の「路地」を舞台に文学を極点にまで開示した中上の物語空間の生成とそれを育んだ〈熊野〉のトポロジー、差別と〈聖なるもの〉の回路を探る。

[授業計画]
1976年の差別をめぐる座談会(野間宏・安岡章太郎)での中上発言を導入に、作品とその生涯を概観し、中上文学への扉を開く。前半は、卓抜なルポルタージュ『紀州―木の国・根の国物語』を読み、差別と天皇制、<熊野>をめぐる思考の旅を辿る。また中上のすぐれた評論や、竹原秋幸を主人公とする三部作(『岬』、『枯木灘』、『地の果て 至上の時』)を取り上げ、中上以外の誰にもなしえなかった文学の到達点と構築力を探る。また余裕があれば、劇作家秋元松代の戯曲も扱いたい。

[教科書]
『紀州』(朝日文庫)、『岬』(文春文庫)、『枯木灘』(河出文庫)、『地の果て 至上の時』(新潮文庫)他。品切れの場合は、古本市場で購入すること。
[参考文献]
全集現代文学の発見『日本的なるものをめぐって』(學藝書林)、五来重『熊野詣』(講談社学術文庫)、中上健次全集、高澤秀次『中上健次事典』(恒文社)、同『評伝中上健次』(集英社)他。




入門ゼミC−8
後期、金曜 2時限
シラバス 折口.jpg[授業テーマ]
国文学・民俗学の研究の一方で、短歌、詩、小説を書き、詩的想像力の溢れる仕事と作品を残した折口信夫(おりくち・しのぶ、1887〜1953)の芸能論を読む。「日本人は……「哲学」などによっては、自分の抱く思想を表現してこなかったかも知れないが、まちがいなく芸能の中にはその思想の、めざましい表現の諸形態を見つけることができる。折口信夫の着想は正しかった」(中沢新一)。饗宴の場に訪れたまれびと・精霊が祝福の詞章を語る――。折口はそこに祭りと芸能の源泉があると捉えた。それはまた文学の「発生」をも示唆するものだった。今なお多くの人を刺戟してやまない折口信夫の芸能論を読みながら、日本の芸能の様態と特色について考えてゆく。

[授業計画]
「饗宴」、「まつり」、「まれびと」、「もどき」、「見物」、「桟敷」など、折口独自の用語に光を当てながら、『日本芸能史六講』や「翁の発生」を読み進めていく。また適宜、授業内容に関連する芸能の映像資料を鑑賞する。

[教科書]
折口信夫『日本芸能史六講』(講談社学術文庫)/ちくま日本文学025『折口信夫』(筑摩文庫)(880円)
[参考文献]
服部幸雄『大いなる小屋―江戸歌舞伎の祝祭空間』(平凡社ライブラリー)、『折口信夫事典』(大修館)、中沢新一『古代から来た未来人 折口信夫』(ちくまプリマー新書)




日本文化論1
前期、金曜 3時限
シラバス 世阿弥.jpg[授業テーマ]
賤民・芸能民の文学と芸能㈰。「宿命的といおうか。ここに、永遠に芸術とはなりえない漂泊の芸能がある。……そんな芸能は、演劇などと呼ばれる舞台芸術とはなんら関係のない生命圏をもつ」(郡司正勝)。「能」といえば、高尚でとっつきにくい、と感じる学生が多いだろう。だがもともと能の原型の「猿楽能」は、賤民たちの芸能で野外で演じられた。授業では、『鵜飼』・『阿漕』など賤民を主題とした作品と天皇伝承にまつわる『蝉丸』を取り上げる。皇子に生まれながらも蝉丸は、盲目ゆえに逢阪山に捨てられる。琵琶を弾く蝉丸のところにある日、発狂して放浪する姉の逆髪が訪れ再会を果たすが……。『蝉丸』の原型となった芸能民・職能民と天皇の所伝をも探ってゆく。


[授業計画]
能作品の映像を導入に、能の構造・様式を理解し、また猿楽能の成立を学んだあと謡曲(能の台本)『蝉丸』、『鵜飼』などを読み進める。現代のすぐれた評論や創作も合わせて読んでゆきたい。人数によっては演習形式の授業も行なう。なお6月13日には国立能楽堂で『蝉丸』の演能を鑑賞する予定である。また余力があれば、能の最高傑作の一つ『芭蕉』(9月7日)も鑑賞したい。

[参考文献]
世阿弥『風姿花伝・三道』(角川ソフィア文庫)、山口昌男『天皇制の文化人類学』(岩波書店)、服部幸雄『宿神論―日本芸能民信仰の研究』(岩波書店)、兵藤裕己『琵琶法師』(岩波新書)、他。




日本文化論2
後期、金曜 3時限
シラバス さんせう太夫.jpg[授業テーマ]
賤民・芸能民の文学と芸能㈪。「漂泊の芸は、劇場という檜舞台を最後まで拒否する。舞台は、民家の庭先であり、大道であり、河原であり、衢(ちまた)であった」(郡司正勝)。説経語りと呼ばれる漂泊の芸能民たちがいた。彼らはササラを擦り、胡弓や三味線を弾きながら、説経を語った。授業では、熊野信仰に題材をとった『小栗判官』を読む。姦計によって地獄へ堕ちた小栗判官は、蘇生するものの、その姿はおぞましい餓鬼形だった。そこで恋人の照手らは小栗を車に乗せ、救済を求めて熊野への道行きを開始する……。小栗の物語の深層を探り、「語り」の物語宇宙を覗く。


[授業計画]
『小栗判官』をていねいに読んでゆく。その際に『絵巻物による日本常民生活絵引』や『七十一番職人歌合』などの図像、絵画資料も大いに活用したい。「陰惨な奇跡劇」(折口信夫)というべき小栗の物語は、国文学者だけではなく中上健次ら作家をも強く引きつけた。彼らのすぐれた作品・評論も紹介してゆく。人数によっては、輪読形式・演習形式の授業もありうる。なお12月下旬の26日〜29日頃、大阪を経由し、熊野古道を歩くフィールドワークを予定している。

[教科書]
新日本古典文学大系『古浄瑠璃 説経集』(岩波書店)、東洋文庫『説経節』(平凡社
[参考文献]
五来重『熊野詣』(講談社学術文庫)、岩崎武夫『さんしょう太夫考・正・続』(平凡社)、折口信夫全集2巻『古代研究(民俗学篇1)』(中公文庫)他。




フィールドワークの実践1
前期、火曜 3時限
P1010570.JPG
[授業テーマ]
土佐・物部フィールドワーク。四国山地の只中、高知県香美市物部町で山村生活を体験する。ここでのフィールドワークとは、具体的な世界とぶつかることで自分の問題を発見し、頭と身体で考える過程を指している。地元の方々との交流を通じて山村の生活文化の豊かさを身をもって体験し、主体性や行動力、共同性を養うのが狙い。7月15〜19日の2泊3日、または3泊4日を予定している。土佐の民間信仰いざなぎ流の体験実習や霊跡巡り、深い森に分け入るネイチャー・ツーリングや登山、柚子皮を使ったクラフト、薬膳料理・狩猟料理の実習など多彩なプログラムを用意。コース別の実習もありうる。宿舎は自主運営の「和光大学ものべ荘」。自分達で実習のテーマを詰めてゆき、先輩や地元の方と相談しながら、準備と予習を進めてゆく。なお往きか帰りに、高知市の「牧野植物園」と「寺田寅彦記念室」、南国市の「県立歴史民俗資料館」の見学も予定している。

[授業計画]
毎週の通常授業はないので、年度始めのオリエンテーションに必ず出席すること。毎週、または各週の火曜3限を、経験者の学生をリーダーに、予習とミーティング・準備作業に当てる。
[参考文献]
図書館や山本ひろ子研究室の資料を漁ること。また自分たちで資料集を作成。




フィールドワークの実践2
後期、火曜 3時限
日刀たたら.jpg
[授業テーマ]
出雲たたらフィールドワーク。たたら製鉄のふるさと中国山地の「鉄の文化圏」(米子〜出雲〜石見)を巡る。八岐の大蛇伝説が息づく中国山地は、日本最大の製鉄地帯だった。実は大蛇神話もたたら製鉄と深い関係がある。フィールドワークでは、唯一の「高殿たたら」を残す島根県山間部の「鉄の村」、たたら操業を復元した工房「日刀保たたら」、鉄の女神が鎮座する「金屋子神社」、鉄関係の資料を収集した「和鋼博物館」などを広域に巡る。余裕があれば、近年、世界遺産に登録された石見銀山も訪ねたい。

[授業計画]
たたらに関する基礎知識を映像や資料で学び、みなで協力して地図やリーフレットの類いを集め、FWに備える。

[参考文献]
窪田蔵郎『鉄から読む日本の歴史』(講談社学術文庫)、他適宜プリントを配布。 島津邦弘『山陰・山陽 鉄学の旅』(中国新聞社)、『和鋼風土記』(角川選書)など。




宗教思想論1
前期、火曜 4時限
シラバス お伽草紙.jpg[授業テーマ]
「諏訪の神秘は過去に向って穿(うが)たれた底無しの竪坑のようである。入りこんだらとめどもなく落ちて行くよりほかはない。すでにおびただしい落下経験の記録が世に出ている」(川村二郎)。神仏習合の中世には、神々の前生(本地)を説く物語縁起が盛んに作られた。「諏訪の縁起」・「諏訪の本地」もそのひとつで、主人公の名から、甲賀三郎の物語として流布した。持ち伝えたのは、民間の歩く宗教者たちである。兄たちの姦計で蓼科山の洞穴に閉じ込められた三郎は、地底の国々を巡歴し、三十三年目に地上に出て諏訪大明神として祀られた……。地底巡歴などすこぶる起伏に富んだ神の前生譚から、中世の諏訪信仰と物語世界を探ってゆく。


[授業計画]
中世の本地物語について概観したあと、御伽草子のテクストで甲賀三郎の物語をていねいに読み進める。諏訪信仰の抽出はもちろん、中世の神話・物語的世界についても考察してゆく。輪読や演習形式もありうる。なお5月連休に、辰野・飯田・諏訪を巡るフィールドワークを予定している。

[教科書]
「諏訪の本地―甲賀三郎の物語」(新潮日本古典集成『御伽草子集』所収

[参考文献]
『諏訪大明神画詞』(神道大系所収)、柳田國男「物語と語り物」(ちくま文庫柳田國男全集11巻))、同『信州随筆』(同14巻)、定本柳田國男集、服部幸雄『宿神論』(岩波書店)、東洋文庫『神道集』(平凡社)、中沢新一『精霊の王』(講談社)他。




宗教思想論2
後期、火曜 4時限
kanayago3.jpg
[授業テーマ]
八岐の大蛇伝説に彩られた、たたら製鉄のふるさと=中国山地に目を向けながら、たたらのわざの秘密と信仰・文化を探る。炉釜に砂鉄を投入し、融解させるたたら製鉄は、日本独特の製鉄法で、たたら師や鍛冶師たちは、農耕民・漁民とはまるで異なる職能の文化を伝えてきた。鉄溶練の技術と歴史、たたらのわざを教えたという鉄の女神=金屋子神の伝承や、独自のコミュニティと禁忌習俗などを学ぶ。

[授業計画]
「もののけ姫」のたたら場シーンを導入に、最後のたたら師たちを描いた貴重な映像や近年復活したたたら製鉄の映像を鑑賞し、たたら製鉄の概容や歴史を理解する。そのあと、歴史資料や祭文、秘伝書などを読み進めながら、たたらのわざと信仰を学んでゆく。なお11月下旬には希望者で、中国山地の「鉄の文化圏」(米子〜出雲〜石見)へ出掛け、「鉄の村」やたたら操業の工房「日刀保たたら」、「和鋼博物館」などを回る「出雲たたらフィールドワーク」を予定している。余裕があれば、近年、世界遺産に登録された石見銀山も訪ねたい。

[教科書]
窪田蔵郎『鉄から読む日本の歴史』(講談社学術文庫)、他適宜プリントを配布。

[参考文献]
島津邦弘『山陰・山陽 鉄学の旅』(中国新聞社)、『和鋼風土記』(角川選書)など。




日本の思想・宗教・文化
通年、火曜 5時限

[授業テーマ]
ラディカルな日本文化の深層へ。日本の文化・思想の重層性と可能性を探る。中世から近現代までが主な射程。天皇制と差別・職能民、祭りと儀礼の民俗宇宙、シャーマニズムとわざ・呪術などを扱う。なお昨年度からの流れとして、諏訪信仰、宗教芸能とその哲学、中世の王権と宗教思想などがある。なお前期の講読には柳田國男の『毛坊主考』と諏訪関係の資料、後期には呪術・神楽関係の資料が予定されている。

[授業計画]
ゼミ長以下、ゼミ生が主体的に運営する。講読を柱に据えながら、ゼミ生それぞれの関心テーマを織り交ぜながら進めてゆく。フィールドワークとしては、5月連休に諏訪御柱とミシャグジをめぐるFW、9月半ばに沖縄研修旅行、11月末に広島県山間部の荒神大神楽見学などを予定している。このほか、適宜課外活動も行なう。

[教科書]
柳田國男全集、折口信夫全集、中沢新一『精霊の王』他多数。



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山本ひろ子先生のプロフィール 山本ひろ子
日本宗教思想史専攻。70年代に生まれた「寺小屋教室」にて、原典購読を中心とした活動を続ける。
山本ひろ子研究室とは? 山本ひろ子
和光大学A棟816号室を根城にさまざまな活動を展開する山本ひろ子研究室。
先生の著作紹介 山本ひろ子
山本ひろ子先生の著作をご紹介します。

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